ビルメン業者の事業承継を成功に導く9つのポイント

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ビルメン業者、事業承継が進まない本当の理由

事業承継がなかなか進まないことは、今や国家的危機として捉えられている面があります。そしてビルメン業界でもそれは同じようです。多くの社長から、この問題で頭を悩ませている話を聞きます。

そもそも、なぜ事業承継は進まないのでしょうか。「後継者が継ぎたいと思えるような、魅力的な事業展開をしてこなかったからだ」「子息など親族で継ぎたいという人材がいない」など、世間では様々な理由がまことしやかに語られています。

しかし、数々の事業承継の現場の話を聞いて、接していると語られている上記のような理由とは、また違ったものを感じます。葛藤や確執、自分の権力への執着というか、もっと人間くさいもの、業のようなものさえ感じます。

事業承継が進まない本質的と思われる理由をいくつか列挙します。

1.「社長業」より楽しい仕事が見つからない
2.他人のアドバイスを聞き入れることができない
3.本当は跡をついでほしいにも関わらず、子供には「好きな道を行け」と言っている
4.社長業の大変さばかりを後継に伝えているため、後継候補が継ぎたがらない
5.引き継いだ後、会社がうまくいくか心配で、もう少し状況が良くなってから渡そうとしている

うまくいく事業承継の要諦とは

事業承継というと、まず事業を渡す社長の立場から考えていくことが殆どです。先代の立ち場から考えなければいけないことが多々あることは事実です。しかしうまくいく事業承継を見ていますと後継者がうまく力を発揮できる舞台をつくることに焦点を当てる、これから受け継ぐ後継者の苦労や困難を予測し、未然に防ぎ、乗り越えられるように思案し、承継していくことこそが大切だとみます。

後継者の立場からすれば、先代社長から真に受け取りたいものは、財産でも金品でもない。本当に欲しいものは、先代社長の頭の中にあるノウハウや価値観や判断基準など、目に見えない知的ソフトウェアです。ノウハウや価値観、判断基準は、お金で買うことはできません。またコンサルタントや他の現役社長から学ぶこともできません。実際に経営を実践してきた社長が経験を通じて学んだ美学、これこそ後継候補が最も欲しがっているものです。

後継者の視点・立場に立って、事業承継のすべてを考えてみると、きっと今までとは違うものの見方ができることと思います。

ビルメン事業承継、主役は?

会社を代表する立場の社長には、「主体性」が必要です。経営がうまくいかないことを景気のせいにしたり、業界のせいにしたり、あまつことか社員のせいにしたり・・・・。うまくいかない中、「自分にできること」を真っ先に考えなければいけません。事業承継についても同じです。

「まさに、清水くんの言うとおり。きちんと準備しなければ」とは言うのですが、なかなか行動に移せない社長が多い。誰かがやるだろうくらいに考えて、事業承継について「私にできることはないか?」と思うことさえない。これでは、一歩も前に進まないと言っても過言ではないでしょう。まずは「私にできることはないか?」という心構えを持つことです。後継者を一人前に育て上げ、事業承継を成功に導くのは、社長である自分自身なんだ、ということを強く自覚してほしいと思います。その意識を持てば、事業承継は必ず成功するでしょう。しかし・・・・自分の意識ほど頼りにならないものもないのが、身も蓋もありませんが、世の中の現実です。
第三者にアドバイザーやセカンドオピニオンを持つのも実効性を高める良い手段です。

ビルメン事業承継、後継者の悩みベスト5

「え?そんなことで悩んでいるのか?」後継者の悩みは、地域・業種・業態・会社の規模・年齢・性別に関係なく同じようで、その多くは社長からは想像もできないことが多いようです。事業承継コンサルの大先輩の話では、昔から後継者の悩みとは変わらないそうです。

ここで、その代表的なものを上げてみます。

1.なんだかんだと、社長がなかなか引退しない
2.社長と折り合いがうまくいかない
3.年上社員や古株社員とうまくいかない
4.社内にいる親族の扱いに困っている
5.社長としてやっていく自信がない、事業を引き継いで経営をしていく自信がない

後継者の悩みは、社長には想像できない特殊性の高いものです。しかし、だからこそ、後継者の悩みを理解し、後継者が思い切り演じることができる舞台を社長の手で作っておいてほしいです。
成功する事業承継は、後継者の悩みを社長が心から理解し、共感するところから始まります。

事業承継に失敗する社長に共通している5つのパターン

ビジネスにおいて、成功のパターンはたくさんあるようですが、失敗のパターンは驚くほど似ていると言います。会社を引き継ぐ立場である社長にも、共通の失敗パターンがあります。言葉を失ってしまうほど悲惨な事例に出会うこともあります。しかし、失敗した本人である社長は、自分の過ちによって失敗したことに気づいていない。最後まで他人に責任転嫁するのです。

失敗する社長の共通点として以下のようなことがあります。

1.いつまでも「社長」を引退しない
2.引退したものの、口を出さずにいられない
3.親族争いの火種を消しきれない
4.株式発行に無頓着で株主構成を複雑化させている
5.多額の借金があり、しかもその存在を明確にしない

このような事例は、特別なことではありません。よくあるケースです。事業承継に失敗しがちな社長と同じことをしていませんか?今一度、自分の胸に聞いてほしいと思います。

事業承継に成功する社長に共通している5つのパターン

反対にうまく承継できている社長のパターンも上げてみます。

1.謙虚に人のアドバイスにも耳を傾けている
2.後継者を褒めて、自信とやるきを引き出している
3.交代のセレモニーをきちんと行い、交代を周囲に周知させている
4.期限を区切って「社長の帝王学」を伝えきっている
5.継いだ後、求められれば相談に乗るが、自分から出ていかない

もうおわかりのように、事業承継を成功させるためには、失敗している社長がやっていることと逆のことをすればよいのです。至ってシンプル。社長の心構えや考え方、行動一つで成功させることが可能です。

事業承継に失敗する後継者に共通している3つのパターン

後継者の方にも、事業を受け継いだ後、うまくいっていない方には共通の性質があるようにみえます。

以下、私見もありますが、列挙してみます。

1.継いだ途端、新規事業をドンドン立ち上げる
2.先代社長を超えようと競い、会社規模を先代以上に大きくしようとあがく
3.早く実績を上げようとあせって、地道にコツコツと積み上げていくことができない

後継者が失敗するパターンもやはり、共通していることがとても多いと感じます。失敗事例を他山の石とせず、謙虚に学び、気づくことが成功する事業承継に繋がります。

ビルメン事業承継、後継者選びのポイント

後継者選びは、事業承継の要です。選び方次第で、今後の会社の盛衰が決まってしまいます。後継者を選ぶ場合は、血族・親族から選ぶか、他人から選ぶかという選択があります。

血族・親族から後継者を選ぶ場合

息子や娘など、実子を後継者に選ぶかどうかのポイントは、地道な経営をすることができるか、実務的で地味な性格であるかということを見抜く必要があります。後継経営は、地味にコツコツやっていくことが本分です。派手好きな人が後継者になると、間違いなく会社は破綻します。また、自信がなさすぎる人にも問題があります。社長業は孤独です。この不安な心に寄り添うふりをして近づく詐欺や、寄生しようとする偽コンサルタント、嵌めようとしたりする良からぬ輩が色々なかたちで近寄って来ることもあります。このようなことにも、実務的、調整的、堅実的に対処できる性格であるかを見極めることが大切です。

血族・親族以外から後継者を選ぶ場合

この場合、優秀で力のある人に会社を任せることができるという利点もありますが、副作用もあることを知っておきたいです。例えば、「連帯保証をどうするか」、「株式をどうするのか」などです。任せる社長と後継者が事前によく話し合って、取り決めていかなければいけません。「事業を渡した会長の報酬をどうするのか」、「社長の報酬をどう決めるのか」なども含め、お互いの理解を深めた上で決めることです。

このような取り決めは多くの場合、口約束で決まってしまいがちだから、必ず文章にしておくことが大切です。後々、言った言わないでもめない為にも、どんな細かい約束についても文書化して取り交わすことを強くお勧めします。

後継者をどう選べばよいか、それは最高レベルの経営判断と言えるでしょう。決して、過去の慣習や思い込み、一時の感情や勢いで選んではいけません。安易な気持ちで選んでしまうと、渡した社長もイライラし、継いだ方も自分の思い通りにいかずに不満が蓄積し、結局失敗してしまいます。後継者は、冷静に、冷徹に見つめて選抜することが大切です。この点を踏まえても、業界の実務家にアドバイザーやセカンドオピニオンとして専門家としての意見をもらうことも事業承継を成功させるのに良い手段かと思います。しかし、この時もあくまで独立した第三者に頼むことが必須です。

事業承継支援の正しい取組みとは

事業承継支援に関わる方についての注意点、また依頼する側の方の注意点についても書いておきます。

業界の人間として、事業承継支援の正しい取組みとは、依頼者が抱える問題を正しく見つけることだと思います。問題を正しく定義することができれば、事業承継問題の半分以上は解決できたようなものです。業界特有の問題、事例をすんなり理解できる専門家は、その点でも大きな強みになります。

これまでのビルメン事業承継支援の取組みが、期待されるほどの成果を生み出さなかった理由は、支援者側の目線で支援していたことにあります。すなわち、依頼者側の目線(業界特性の理解不足)で支援が行われていなかったということです。

生命保険契約を売りたい生命保険セールスマン、融資や投資信託を売りたい銀行員、資産税サービスを売りたい税理士、いずれも支援者側の商品・サービスを販売することを目的とし、取り扱う分野に関連した支援を提案し、実行してきました。しかし、お客様側に立ってみますと、本当に解決すべき問題が他にあったということがあります。事業戦略の見直しが求められるお客様に、遺産分割問題が重要だからと生命保険を契約させられるケース、節税策が必要のないお客様に、融資による株式の買取りスキームが提案されるケースなど、お客様が抱える問題の本質は無視し、支援者側の商品・サービスに係る問題点だけしか見ていないケースが多く見られます。これでは事業承継の問題を解決したと言うことはできません。

それでも、何が正しいのかわからないお客様は、それで満足してしまっているのです。結果的に本質的な問題が解決せず、後から問題が顕在化し、トラブルが発生するケースが多く見られます。それゆえ、あるべき支援者の姿は、お客様が抱える問題を、正確かつ網羅的に把握しようとすることです。問題を漏れなく発見することが最大の支援策となります。 しかし、事業承継の問題の範囲はとても広く、その専門家と称される人たちであっても、それらを網羅的に把握することは著しく困難でしょう。

事業承継の問題は、大別しますと、事業そのものの問題、後継者人材のメンタルな問題、経営資源の移転手続きの問題、この3つに大別されます。支援者は、これら3つの分野のすべての典型論点を調査し、問題の有無を探らなければいけません。後継者キャリアの専門家であっても、M&Aの譲渡手続きの問題点を指摘しなければいけません。資産税の税理士であっても、社長の経営管理手法の問題点を指摘できなければいけません。幅広く、網羅的な観点とその支援が求められるのです。

このような事業承継支援は、容易に行うことができるものではありません。依頼するコンサルが、セカンドオピニオンが、「正しい問題を見つけて」しっかり対応できるか、もしくは専門家としてのチームであるか、ビルメンテナンス業界を理解したうえでのアドバイスがもらえるのか。

事業承継の支援者が、そして依頼者がベストなマッチングでビルメン事業承継問題をベストに解決されるようになることを祈ります。

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このコラムの執筆者

清水聡希のアバター 清水聡希 ビルメンポスト管理人・ビルメンコンシェルジュチーフSG

「現場の代務経験ゼロ」「全管理物件黒字化達成」が自慢の現役ビルメンマン。ビルメンテナンス企業の収益改善・人材施策・事業承継・ビルオーナーの経営相談のコンサルティング・アドバイスを中心に最近では空き家相談・マンション管理相談も行っています。

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